プロカメラマンによるSONY α9の機材レビュー

【機材の話】SONYのミラーレス一眼カメラ「α」と「α9」

プロカメラマンによるSONY α9の機材レビュー

SONYミラーレス一眼カメラα(アルファ)シリーズについて

僕は2017年よりSONYのフルサイズミラーレスカメラαシリーズを使い始め、2018年にシリーズ最高のオートフォーカス性能を持つα9を導入して、それまで長年使っていたCANONの一眼レフカメラを使うことをやめました。

なぜ家族写真の専門家がミラーレスカメラを、ひいてはSONYのαシリーズを使うようになったのかを説明していきます。

優れたオートフォーカス性能

第2世代までのα7シリーズ(α7Ⅱ、α7RⅡ、α7SⅡなど)はオートフォーカスの俊敏性に不満がありプロカメラマンの現場で使用できる用途は限定的で、とくに動きが予測不能な子供を撮影する場面では使用できるシーンは限られていました。
(誤解がないように言いますが、元々原理的にオートフォーカスの精度に関しては一眼レフよりもミラーレスカメラの方が優れているので、被写体の動きが少ない場面や離れている場面では第2世代や第1世代のα7でも活躍できます)

ただ2017年以降に発売されたα7Ⅲ、α7RⅢからはオートフォーカスの俊敏性も向上し高速で動く被写体の撮影でも問題なく使用できるレベルになりました。

ボディの操作性、応答性、バッテリーの性能が向上

α7Ⅲ、α7RⅢ、α9以降のモデルは、ボディの操作性やバッテリーの性能が第二世代と比べて随分向上しました。

第二世代であるα7RⅡを使用しているときは、常にバッテリー残量を気にしながら撮影していましたが、第三世代以降のモデルではそこまで心配しなくても大丈夫になりました。

もちろん業務で使用するので予備バッテリーは複数所持していますが、一本のバッテリーで長い時間もってくれると集中力を切らさずに撮影できるので助かります。

また第二世代のときは非常に使いにくかった操作性、応答性、ボタンカスタマイズの自由度も代を重ねるごとに改善されてきました。

操作性に関しては今でもCANONが一番使いやすいと思っていますが、SONYでもいけるかなというレベルにまで改善されたという印象です。

第三世代からプロカメラマンがSONYαシリーズに一気に移行し始めたイメージがありますが、オートフォーカスの性能向上はもちろん、操作性などの改善がかなり大きな要素であったのだと思われます。

SONYα9はとくにすごい

αシリーズ最高のオートフォーカス性能

さらにαシリーズ最高のオートフォーカス性能と連写性能を併せ持ったα9は、発売後1年半以上が経過した2019年1月現在でも他社のミラーレスカメラと比べて頭一つ抜きん出た性能です。

というよりもα9を1年間使い込んだ感想としては、プロ用の一眼レフカメラと比較してみても同等以上のオートフォーカス性能なのです。

家族写真で子供を撮影する場合、ピントを合わせる事が非常に困難な場面があります。

室内などの近距離で子供が高速で近づいてくる場面や、予測不能な動きをする場面などは、遠距離で高速で移動する被写体を撮影するよりも遥かにピントを合わせる事が難しいのです。
(被写体との距離が近いほどピントは浅くなる為)

そんな場面でもα9のAF-C(被写体にピントを合わせ続けるオートフォーカスモード)であれば問題なくピントを合わせる事ができます。

さらにα9やα7Ⅲなどの優秀な顔認識機能で被写体の顔や瞳にピントを自動で合わせる事が可能なのです。

これは実際に使ってみると驚きで、オートフォーカスの枠がサクサクと被写体やその顔を追従する様子には、一眼レフカメラを使用していた期間が長い人ほど衝撃を受けるでしょう。

ちなみに他社製のミラーレスカメラにも、顔認識や瞳認識を搭載しているものもありますが、それらと比べても最新のαシリーズは圧倒的に高精度です。(2019年1月時点)

また、カスタムボタンに設定を割り当てることで、AF-S(一回ボタンを押すごとにフォーカスを合わせるオートフォーカスモード)から瞬時にAF-Cに切り替える事が可能です。

私は普段はAF-Sで撮影していて、動きのある被写体の時だけAF-Cで撮影したいのです。

SONY Eマウントレンズにはレンズ自体にカスタムボタンが備えられているものもあるので、それを活用すればなお便利です。(ボディのカスタムボタンだけでも充分ですが)

SONYは、この優れたオートフォーカス性能を活かして予測不能な子供の動きを逃さず撮影できる事をもっと積極的に売り出せばいいのになと思います。

それくらいα9のオートフォーカスはずば抜けて優れています。

目の前で突然走り出した女の子。AF-Cを設定したカスタムボタンで、瞬時に瞳にオートフォーカスし追従してピントを合わせてくれました。
SONYα7、α9の瞳オートフォーカスの性能はすごい。
本来カメラはじっと構え動かないようにして撮るものなのですが、SONYの高性能なオートフォーカス(AF-C)を駆使すれば、被写体と自分が歩きながらでも顔や瞳にピントを合わせ続けることができます。もちろんシャッター速度は速めに設定しないとダメですよ。

一眼カメラの最大の弱点を克服

一眼カメラには、シャッターを切る際にファインダーや背面液晶が一瞬ブラックアウト(真っ暗になる)するという弱点があります。

ブラックアウトするのは一瞬なのですが、この一瞬被写体が見えなくなることがプロカメラマンにとっては結構問題なのです。
プロカメラマンは被写体から一瞬たりとも目を離したくないものですから。

これは一眼レフカメラでもミラーレス一眼カメラでも発生する現象なのですが(発生するメカニズムは異なります)、α9ではブラックアウトフリーというSONY独自のセンサー技術によって、一瞬もブラックアウトすることなく被写体を捉え続けることができるのです。

使い始めた当初は、シャッターを切っても画面が何も変わらないことが違和感で撮れたのか撮れていないのかわからず不安だったのですが、意外とすぐに慣れました。

慣れてくると単写時はもちろん、連写中でも被写体から目を離すことがないという革新性にやめられなくなります。

無音で撮影できる

ミラーレス一眼カメラには撮影時のシャッター音を鳴らないようにする、サイレントシャッターという機能があります。

(一眼レフカメラでもミラーアップすればサイレントシャッターを使うことができる機種もありますが、ファインダー撮影時は使用できません)

この機能は、家族のなんでもない日常をそっと撮影したいという思いから、出張家族撮影のコトノハカメラを始めた自分にとっては本当にありがたい機能です。

家族の日常をそっと切り取りたい僕としては、被写体にできるだけ自分やカメラの存在を意識されたくないのです。

そんな時に一眼レフカメラのガシャッというシャッター音は、ここで写真撮ってるぜっていうアピールのようで邪魔でしかありませんでした。(Canonはまだマシで、Nikonはとくにうるさい)

他社のミラーレスカメラではサイレントシャッターを使用中はオートフォーカスや連写に制限がかかる機種も多いですが、α9はサイレントシャッターを使用しても制限がかからないので常にサイレントシャッターにしておき、必要な時のみシャッター音を鳴らすように設定しています。

サイレントシャッターで日常を切り取る。
サイレントシャッターによる無音撮影のおかげで、撮影者を意識されることなく日常を切り取ることができました。
サイレントシャッターで家族写真を撮る。
拗ねているお子さんをバシャバシャとシャッター音を鳴らして撮影することは、本人の気持ちを逆なでするようでオススメできませんが、サイレントシャッターであれば気づかれることなく撮影できます。

SONYα9は家族写真において最高のカメラ

SONYのフルサイズミラーレスカメラα9は、家族写真を撮影するという目的において現時点で最高のカメラです。

この1年間、出張家族撮影というカメラマンにとって非常に難しい撮影環境で使ってきた僕が断言します。

ちなみにα9はフルサイズミラーレスカメラで非常に高価なカメラですが、2019年には一回り小さなセンサーサイズであるAPS-Cセンサーを搭載し、α9並みのオートフォーカス性能を有しておそらくもっと廉価な新しい機種が発表されるとも噂されている(✳︎追記参照)ので、アマチュアの方にはそちらの方がおすすめです。
もしくはα6500などもオートフォーカスの性能は高いと聞きます。
APS-Cではなくフルサイズをご希望の方には、コストパフォーマンスに優れるα7Ⅲがおすすめですね。

僕は長年CANONユーザーのプロカメラマンでCANONのレンズもまだたくさん所有しているので、CANONが2018年に発売したフルサイズミラーレスカメラ EOS Rシリーズにはとても関心を持ってますが、今のオートフォーカス性能では家族撮影の現場には使用する気にはなりません。(シビアな家族撮影以外では充分実用になると思いますが)

今後発売されるプロ用のEOS Rに期待しています。

元々CANONやNIKONなどを使っていてレンズをたくさん持っているなどの理由が無ければ、単純に子供撮影をしたい方にはSONYのαシリーズ(ご予算が限られている場合は、フルサイズカメラよりもα6500などのAPS-Cセンサー搭載機の方がおすすめ)が圧倒的なオートフォーカス性能を持つため非常におすすめです。

✳︎追記(20190122)

SONYよりAPS-Cミラーレスカメラ「α6400」が発表されました。(発売は2019年2月22日予定)

最上位機種α9譲りのAFアルゴリズムを組み込んだ新機種で、AF性能が格段に向上しているようです。
それでいてエントリー層向けに価格は抑えめに設定されているようですよ。

普及機でα9と同等クラスのオートフォーカスが搭載されるというのは本当にすごいことです。

ボディ内手ブレ補正機構が搭載されていないことを差し置いても、同じAPS-Cで上位機種であるα6500よりもおすすめなんじゃないでしょうか。

これとSIGMAのDCレンズシリーズ(SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | ArtやSIGMA 16mm F1.4 DC DN)などと組み合わせると、お父さんお母さんが子供を撮影するには最強の組み合わせになりそうです。