先日、新海誠監督の新作映画「天気の子」を観てきたのですが、映像と音楽がとても美しく圧巻でした。
新海誠作品ではもはや当たり前となった独特で美しい風景描写ですが、今作は特に水の描写がすごく綺麗です。
そこから写真の話につながるのですが、写真のレタッチ(現像)をされる方の中には新海監督の作品のような幻想的な写真に仕上げてみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
余談ですが、新海監督の前作「君の名は」が流行ったとき、新海誠風に加工できるというアプリも一部の人たちの間で流行してましたが、なかなか粗悪な品質でなんちゃって感が強かったです。
さて今回の本題、新海誠作品に対するオマージュとしてレタッチワークを考えていきましょう。
使用したレタッチソフトはAdobe Lightroom Classic CCのみです。
写真レタッチにおいては圧倒的に編集耐性が優れているので、RAWで撮影したデータを使用しましょう。
新海誠作品風レタッチを考える
新海誠作品の特徴
- 空の描写(雲の描き方、夕焼けの色、星空)
- 光の描写(斜光、木漏れ日、太陽の光芒)
- 水の描写(水滴)
- 色の出し方(彩度強め、明度高め)
写真的観点からみるとこんな感じでしょうか。
上記の特徴の組み合わせによって、新海誠作品の雰囲気に近づけることが可能になるのではないでしょうか。
実際のレタッチの工程
それでは実際にレタッチ(現像)してみましょう。
RADWIMPSの曲を聴きながら作業するのがおすすめです。
まずは元となる写真をご覧ください。
夏に撮影した空と川が写った写真です。
雲の形が特徴的なので、雲の描写と斜光を意識してレタッチしていきます。
まず未補正状態のRAWデータは非常にねむい写真なので、各種調整によって下地を作っていきます。
以下Lightroomの調整画像はクリックで拡大表示が可能ですので、パラメーターもご参考に。
基本補正パネル
カラープロファイルをビビッドに設定し、彩度を強め画作りの方向性を決めます。
全体的な色味を強調するために、自然な彩度を+30。
未補正状態では木々が暗く見えるのでシャドウを多めに持ち上げる。
特徴的な雲のディティールを出すためにテクスチャを+15。
少し明るさを足して下地の完成です。
HSL/カラーパネル
空の色を調整するために、ブルーの彩度を+15、輝度を-41。
さらに新海作品は木々の明度が高いイメージがあるので、グリーンとイエローの輝度を+20、グリーンの彩度+30。
トーンカーブパネル
トーンカーブでコントラストを調整。
緩やかなS字カーブでコントラストを高める。
今回は絵のようなコッテリ感を出したいので、通常よりも少しやり過ぎなくらいに補正をかけています。
ここまでの工程で下地は完成です。
ここからはRAWデータに存在しないものを生み出して写真を作り込んでいきます。
斜光を作る(補正ブラシ)
普通に平和に生きていて空から舞い降りる光の筋に出くわすことはまぁ無いので、レタッチワークで作ってしまいます。
メインとなる光線は後述の円形フィルターを使って作成するのですが、その前に補正ブラシを使用して光線の下地を作っていきます。
太陽の位置を画面の右上にあると仮定して、右上から左下に斜光が降り注ぐイメージで、ブラシを引きます。
補正値などはあくまで参考ですが、薄めに柔らかく引くことがコツです。
薄めに引くには流線を低く設定して複数回なぞるといいあんばいになります。
斜光を作る(円形フィルター)
円形フィルターはその名の通り丸型に補正することができるフィルターなのですが、これを細く伸ばすことで光線を再現することが可能です。
円形フィルターでそのまま補正値を入れて適用すると、円形フィルター以外の部分に補正が適用されてしまうので、パネルの下の方にある反転にチェックを入れます。
あとは適度な露光量を入力して、右上から左下に向けて円形フィルターを細長く配置していきます。
1本の光線を作る際に、より細くて露光量を多め・ぼかし少なめの2本の線を両側に描き、その間を露光量控えめ・ぼかし多めの柔らかい線で描くといい感じになります。
コツは一つの円形フィルターで描くのではなく、複数のフィルターを組み合わせて描くことです。
さらにアクセントとして、色温度や色かぶり補正を使い光線の中に色を入れると、より雰囲気が出ます。
今回はオレンジ系とマゼンタ系の色味をアクセントに入れてます。
完成
いかがでしょうか。
少し大雑把な作業ではありますが、雰囲気は伝わるかなと思います。
Photoshopを使わずにLightroomのみで出来るというところがポイントです。
Lightroomでは円形フィルターや補正ブラシの設定をコピーしてプリセットに登録し、ワンクリックで使用することができるので使いまわすことも可能です。
写真ごとに最適な補正値や光の向きを考える必要はありますが、一度作ってしまえば他の写真に簡単に流用できることもメリットですね。
レタッチは本当に奥が深いので、色々チャレンジしていただけると幸いです。